身内に不幸があった場合、「喪(も)に服す」といって、神事や祝い事を遠慮する習わしがあります。
ただし、神事については「忌(いみ)」の期間を遠慮するのであって、亡くなられた日より最長五十日を過ぎていれば問題なく、通常通りに神社参りや神棚祭祀を再開することが出来ます。
ここ近年思い違いをした風習が世間に広がり、長い時は一年間などといわれることもあるようですが、これは明治時代の太政官布告の「服(ふく)」といって、慎んだ生活を送る「心喪」の期間からきているもので、「忌」の期間とは意味合いが違います。
また忌とは、故人の弔いに専念する期間で、穢れ(気枯れ)をきらう日本人にとって、浄化されるまで神事や世俗事と関わらずに、いみ籠る期間としたものであります。
祝い事についても、一定の期間を過ぎ、落ち着いたならば、徐々に心も社会生活も平常に戻っていかなければならないので、これも神事に準じて頂いて結構だと思います。
その期間を、血縁や続き柄により目安として示したものが服忌表であり、大本の明治太政官布告にもやはり五十日が最長とあり、これが一般的ですが、現在は社会の変化にもより、実情にあわせて、神社庁が明治時代のものよりも短く変更し示しています。
この度は、それらも参考にしながら、地域柄や古い慣習にも習い、代々伝わる当社独自の服喪日数表を載せさせて頂きましたので、ご覧いただき、神棚の近くに保管頂きたいと思います。
そもそも神社や神事は何より清らかな事を重んじ、その誠の心こそが神に通じる根本であると考えられてまいりました。かつては遠慮するほとんどの方が「この期間は神事に触れたら罰が当たる」そのような神信心によって厳格に守ってこられたものと信じ、今まで言あげしませんでしたが、しかし昨今その根本を勘違いして行き過ぎている感がありますので、是非この機に正しい神まつりを行って頂きたく、本来ならばこのようなことを申すのを忌み嫌うところではありますが、今年は特にご相談が多く寄せられていることもあり、あえて示させていただきましたので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
繰り返しますが、先に述べたように現代社会において一年間喪に服すということは一般的にあり得ないことで、やはり一日も早く神まつりを再開し、日々の御加護を願うべきで、そのままにしておくことはかえって大神様への不敬にも当たりますので、どうぞお聞き届け頂き、まわりにもお広め下さい。
さて、神棚のことについては、先ず帰幽の旨を報告し、次に不浄に触れないよう白紙を貼り、お供えの上げ下げもやむを得ず中断します。葬式当日には葬式後の後祓いや、忌明けのお祓いを受けるのがよろしいでしょう。そして「忌」の日数が過ぎれば半紙をはがし通常のお供えをし、生活も通常に戻ります。
また年末に際しましては、神社から頒布される「お正月様」についても同じことで、忌の期間が明けていれば何んらお受けになりおまつり頂いて問題ありません。どうしても日数が足らず日が明かない場合や、気持ちの整理がつかないこともあろうかと思いますが、その様な時は正月は遠慮し、小正月や二十日正月、または旧正月を元旦として遅らせて取ることも可能です。その場合は神社で御神札を預かってもらい、忌明け後に一日飾りを避けおまつり下さい。そして神送りのどんと祭までの一通りの神事やお供えを短縮して行い、出来る限りの年取り行事をきちんと行って頂くのがよろしいと思います。またその不浄を清めるお祓いを受けることにより、短縮できたり、より清らかに新年を迎えることが出来ます。
さらには、年取りとは、ただ単に歳を取ったり、年が改まるのではなく、年神様をはじめ、神々をお迎えし、新しい年の幸を受けるのが本来の意味であります。年神様はその年年の恵みをもたらす遠い祖先神だともいわれ、毎年毎年感謝の心をもって必ずお迎えしなければならないのは当たり前のことです。
神まつりは、家内安全や家族の健康の源にある「祈りのかたち」なのです。